新規事業を立ち上げるのは、大企業であれベンチャー企業であれ簡単なことではない。

その難しさのポイントはいくつもあるが、そもそも最初の第一歩、つまり「何をやるか」という、事業アイデアを出していく部分からなかなか難しいと感じる人が多い。

「そんな素晴らしいアイデアなんて、俺たち一般人にはなかなか出てこないよ。」
はっきりと口に出すかどうかは別として、どうも「新しいアイデア」を出していくということに対して、及び腰の人が多いようである。

thumb 新規事業アイデア作りは「レシピ」作りである

新規事業立上げの現場では、例えば100のアイデアをとにかく出し、そこから何度かの絞り込みを経て最終的に1つ~2つ程度の案が残る。つまり、まず100のワイルドなアイデアが出てくることが重要なのだ。

もちろん、アイデア出しを助けるためのフレームワークもいくつも存在している。ただ、心の奥底で、「新しいアイデアを出すのは難しい」なんて考えていると、いくらフレームワークがあったところで、新しいアイデアを出すこと自体に気が進まない、自信が出ない、と思ってしまう。

 

そこで提案が1つ。こう考えてはどうだろう。「新規事業アイデア作りは、レシピ作りと同じなのだ」、と。

どういうことかって?では早速、料理をメタファーに話を進めてみるとしよう。

 

1.食材を把握する

料理をするなら、まずは食材からだ。台所に行き、冷蔵庫に入っている材料を確認する。岐阜県産の有機卵や宮崎産地鶏、牛肉、キムチ、しらたき、トマト、タマネギ、レタスなどなど。その他醤油、砂糖等の調味料がある。こういったものを大体頭に入れておくのだ。

これは企業でいうと自社の持つアセットにあたる。ヒト・モノ・カネ・情報・技術・取引先・ブランド・・・。自社が持っている強み、協力会社から調達できるものも含めて、使えそうな材料を頭に置いておこう。

images thumb 新規事業アイデア作りは「レシピ」作りである

2.作る料理を決定する

次に、どんな料理を届けたいかを考えよう。即ち、食べる人の欲求を満たし、喜んで貰える料理を考えるのだ。

皆さんが家庭を守る奥さんならば、家族に今日はどんな料理を食べて欲しいのか、どこで街のレストランやファミレスの料理とは違う、家庭ならではの味を出そうか、なんて考えたりしませんか?料理を食べる家族一人一人の顔を思い浮かべながら、その人達の好みも考慮しながら、使えそうな材料をベースに料理のメニューを考える。今日は寒いし、外回りで疲れているだろうから、暖かくて、がっつりしたものが食べたいだろう、とか考えながら。

企業でいうと、これは想定顧客に提供する製品・サービスを考える部分になるだろう。顧客を思い浮かべ、彼らが求めるもの、純粋に喜んでもらえるものだろうものを考えてみるのだ。(当然、彼らのことを知れば知るほど喜ぶものが想像しやすいのだ)

 

3.食材を揃え、工夫をする

そして、今晩の料理が大体決まったら、また冷蔵庫を確認して、手持ちの食材をもう一度見てみる。足りないものはスーパーで調達できるかどうかを考えればいい。キーとなる食材はこだわりの食材にしてもいい。今日は冷蔵庫の宮崎産地鶏を使って、久しぶりにあの人の好きな親子丼にしようとか、そういう話だ。

 

同時に、その中で自分なりの工夫を加えていく。普通の親子丼じゃつまらない。自分なりのこだわりとか、経験に基づくものでもいい。辛いもののおいしさを知って欲しいと思う人なら、辛めの食材を入れてみるとか。辛い調味料を入れてみるとか。そう、今晩は冷蔵庫のキムチと成城石井に売っていた石垣島の食べるラー油、そしてインド産のカレー粉を振りかけた、「わが家オリジナル特製親子丼」を作ってみるのだ。

 

4.修正する

こんな風にして食材を見て、完成形をイメージしながら食材を切り始め、途中で味見をしながら修正し、完成させていく。ひょっとしたら先週のカレーの時にうまくいったように、隠し味にチョコレートを入れることを思いつき、味の深みを調整するように、最後の最後まで理想の味に近づけていく。

 

5.完成!

そうこうしているうちに、料理は完成。どんぶりに親子丼を盛りつけ、付け合わせとお味噌汁をセットでテーブルに運ぶ。そして、熱々の親子丼を食べてもらい、喜んでもらったり、ちょっぴり辛口な意見を貰ったり。そしてもらった意見は次に活かしてみようかな、とかそんな話だ。

 

まとめ

ふう。随分長いたとえ話になってしまった。でもどうだろう?新規事業アイデアも似たようなものでは無いだろうか?

 

そう、新規事業のアイデア出しというのは、自分なりの「材料の組み合わせ方法」と考えればいい。自分達なりのオリジナルレシピの考案なのだ。

持っている材料や手に入りそうな材料を見て、同時に顧客が求めていそうなものをイメージし、材料を組み合わせて、顧客が欲しいものに変えていく作業。

大事なのは、そして新しい部分は、材料を組み合わせ、お客様に喜んで貰う料理に完成させていく「レシピ」の部分なのだ。

 

そんな風に考えると、新規事業アイデアの創出もそんなに難しくないと思えてきませんか?机に座って難しい顔で同業他社の成功事例を調べているより、週末、たまには自分で料理をしながら、改めて自社の抱える材料や、お客様が食べたいもの、喜ぶものを柔らかい頭で考えてみるのも悪くないかもしれませんね。

 

だんだんお腹が空いてきましたね。皆さんで素敵なオリジナル親子丼レシピを作りましょう!

 

参考:Paul M. RomerのEconomic Growthという文章から影響を受けました。